メッシは 国籍を越え 苦難の中にある人たちを奮い立たせた

「彼ほど飛びぬけた才能の前には戦術も監督も関係ない。」
「メッシのプレーを見ることができるのは、このうえない贅沢だ。」

名実ともに世界最高選手として注目されるようになったFIFA ワールドカップ2010では、監督を務める母国の英雄ディエゴ・マラドーナから攻撃の全権を任されるも、戦術の無い個人技頼みのチームで持ち味を出すことができず。準々決勝のドイツ戦では何もさせてもらえず完敗。このあたりからバルセロナのときと比べて代表で輝けないメッシに対するアルゼンチン国民からの批判が強まるようになる。

私たちは、アルゼンチン代表・メッシの挫折と栄光に人生を重ねた人々を追った。財産のすべてを捨てて、勝利の瞬間を目撃するためにカタールに駆けつけたアルゼンチン人の若者、メッシの故郷で巨大な壁画を描き続ける女性、内戦で足を失いながら、絶望から立ち上がる勇気を得たシリア難民の若者、東日本大震災で被災した少女は夢をあきらめないことの大切さを知った。メッシは、国籍を越え、苦難の中にある人たちを奮い立たせた。

2007-08シーズンはサミュエル・エトーが負傷、ロナウジーニョが不調、加入したティエリ・アンリがチームにフィットできず、期待された攻撃陣が機能しない中で孤軍奮闘。単騎突破から貴重なゴールを決め、暗黒期が到来していたチームの希望の星となる。ただ、過去の3試合よりは出場時間が増えたものの、やはりこのシーズンも怪我で戦列を離れた時期があった。また、完全に過渡期となったバルサは、2シーズン連続で無冠に終わり、大きく期待を裏切ることに。そして、チームの主役はロナウジーニョからメッシへと移るのであった。

31歳となり、ベテランとなったメッシは自身4度目となるFIFA ワールドカップ2018に出場。しかし、第1戦目のアイスランド戦でPKを失敗し1-1の引き分けに終わり、2戦目のクロアチア戦では0-3の完敗と窮地に立たされる。当時の代表監督であるホルヘ・サンパオリはメンバーに誰を入れ、誰を外すかをメッシに訊ねており、このことで選手と指揮官の間に内紛が起きていた。それでも、ナイジェリア戦では自らゴールを決めてチームを決勝トーナメント進出に導いている。ベスト16のフランス戦では2アシストを記録するが、チームは3-4で敗れて敗退。メッシ頼みのチームの限界を露呈することとなった。

「多くのサッカーファン、ネットユーザーからメッシ選手は北京でプレーするのか、問い合わせが寄せられましたが、メッシ選手が出場する試合は現在、北京では予定されていません」

ところで、このメッシ騒動には、イングランドの名選手だったデビッド・ベッカム氏も巻き込まれた。中国の旧正月に合わせて中国版SNS、微博(ウェイボー)に自身の動画とともに、中国語で「明けましておめでとうございます」と中国のサッカーファンに向けてメッセージを投稿したところ、中国の一部ファンからは「俺たちをなめるな」など厳しい反応も寄せられた。

メッシの5人抜きとマラドーナの5人抜きの比較はこちら。

実はベッカム氏、現在メッシが所属するインテル・マイアミの共同オーナーを務めている。中国のファンの機嫌を直そうとしたのか、真意は不明だ。

サッカープレイヤーとしては小柄でストライドは短いというが、爆発的な加速力と繊細なボールタッチを武器に敵陣を切り裂く世界最高峰のドリブラー。トップスピードに乗った状態でのドリブルでもボールが足元から殆ど離れず、相手DFが飛び込む隙を与えない。尚且つ筋肉質であるため、ユニフォームを引っ張るなど故意のファールでも止められず、対戦相手の指揮官から「メッシを止めるにはショットガンが必要だ」とジョークが飛ばされるほどである。

ヴィッセル神戸との試合後、マイアミの監督はコメントしている。「メッシは前日の練習で調子がよかったので、出場することになった」と。だけど、香港や中国のファンは納得しない。

自身幼少期に1万人に2人という難病によってサッカー選手としてのキャリアを断念しかねない経験をしていることから、2007年に難病の人々の救済や彼らの夢を叶え、平等の機会を与えるという信念の元に「レオメッシ財団」を設立。の活動が認められユニセフより国際親善大使に任命されている。

中国のサッカーファンは自分の国の代表にフラストレーションを溜めている。ネット上でも、厳しい言葉が並ぶ。そんな感情が渦巻くなか、香港で試合に出なかったメッシ率いるアルゼンチン代表が中国国内で、アフリカのチームと対戦すれば、イライラが爆発する事態もあり得る。試合会場で何が起きるか分からない。安全面、社会の安定を損なうから、中止を決めたという側面もあるだろう。

グアルディオラ体制最後の年となった2011-12シーズンはクラブタイトルは国王杯のみとなったが、驚異的なペースでゴールを量産し、リーグ戦50得点という前代未聞の記録を打ち立て得点王に輝く。CLでは、3月7日のレバークーゼン戦において大会史上初となる1試合5得点を達成。4シーズン連続で得点王となっている。また、シーズンの公式戦通算得点数は73得点というとてつもない数字を残しており、ゲルト・ミュラーが持っていたシーズン公式戦最多得点記録を塗り替えている。2011年末に日本で開催されたクラブワールドカップでは出っ歯の無礼極まりないインタビューを浴びながらも南米王者サントスFCを子供扱いし、格の違いを見せつけて優勝。何かと比較されたブラジルの新星ネイマールがひたすら守備に追われる中、2ゴールをマークしたメッシは再び大会MVPを受賞した。2012年のバロンドールにも選出され、フランスの"将軍"ミシェル・プラティニの記録を打ち破る前人未踏の4年連続の受賞となった。

ヴィッセル神戸の大迫勇也選手は「惜しい場面もあったしゴールを決めたかったが、まずは怪我なく終えられたことがよかった。メッシ選手はイニエスタ選手とやっていた時と同じような感覚を感じた。やっぱりすごいなと思った」と試合を振り返りました。そのうえで、連覇を目指すシーズンに向けては「きょうは、開幕に向けての準備だと思って試合に臨んだ中で状態のよさを確認できた。これからまたしっかり調整していい形で開幕を迎えたい」と話していました。

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